高雄では2022年下半期、「クリエーティブ・エキスポ台湾」と「台湾デザイン・エキスポ」(5G AIoTやAR、VRなどを活用したテクノロジー展「2022 DigiWave」ではこのエキスポと連携し、音と光を融合した双方型デバイスを構築しました)という二つの大規模イベントが開催され、デザインのエネルギーに満ちています。これに合わせて高雄市政府は、「台湾設計設計台湾」と題する一連のイベントを行い、デザインの力により紅磚街屋など歴史的記憶に富んだスポット6カ所を再活用しています。ここでは現代のデザインを味わい、建築の美学を感じ、さらに歴史の一端と生活の一部を思い返すことができます。
六大歴史スポットは、かつて高雄で最も栄えた哈瑪星エリアにあります。ここは日本統治時代の政治経済の中心だった所で、一部の建物が当時の街の様子を残しており、とても温かみを感じるストーリー性に満ちた古いエリアです。中でも、「紅磚街屋」の外壁は清水赤れんがで構成されており、弧を描いたパラペット(屋上や屋根の外周に設置された低い立ち上がり部分)には日の出の装飾が施されています。修復を経て独特の昭和時代の外観がよみがえりました。戦後、市政府が文化資産保存法にのっとって優先購入権を行使し、貴重な文化財として保存しており、一度は訪れたいスポットになっています。
紅磚街屋から徒歩8分ほどの所にあるのが旧愛国婦人会館です。元は高雄婦人会が提供した女性が集会を開くための場所でしたが、後に慈善事業や各種社会事業を行う重要な場所となりました。また、1931年の高雄港勢展覧会の会場でもありました。今回、現代女性の創作をテーマとした展示により歴史の扉が開かれました。高雄で芸術のエネルギーが光を放ち、アート創作と同時に歴史への敬意も感じられるものとなっています。
さらに港に向かって進むと、蓬莱商港区の3号埠頭そばに高雄港港史館があります。本館は英国式の2階建ての建物で、赤れんが製の外観から「紅楼」の別名もあります。かつては、税務、税関、海事、港務といった官庁だった建物で、近代高雄港の発展の移り変わりの縮図といえます。館内に入ると、時空を超えたような雰囲気で、百年前の歴史の変遷をうかがい知ることができます。
また、鉄道好きの皆さんにとって見逃せないのが、高雄港駅の北号誌楼(信号所)です。ここは台湾で唯一、手動のポイント切り替えや信号装置が建物全体で保存されており、実際に操作もできる所で、鉄道文化財としてとても貴重な存在です。
文化、生活、港務、鉄道に関連した豊かな歴史を探索してきましたが、このほかにも、「貿易商大楼」の前身は日本統治時代の打狗駅前の高級旅館「春田館」でした。駅前という好立地のため、周辺には三和銀行や商工銀行、山形屋という書店が相次いで出店し、「金融第一街」と呼ばれていました。ここは当時の政財界の著名人が必ず訪れる高雄の人気スポットでした。
最後にご紹介する雄鎮北門は、哨船頭の中山大学方向にあります。1876年の完成以来、軍事施設、鉄道部職員の娯楽施設、高雄港務機関、信号所などとして使われてきました。哈瑪星エリアを復興する「興浜計画」が2016年、文化部(文化省)の資金サポートを得てスタート。修復工事が始まり、修復完了後は清朝の兵舎の雰囲気を感じられるスポットになりました。
高雄の六大歴史スポットは、デザインの力で再活用されています。内外の皆さんにぜひ訪れていただき、この場で高雄港の発展の歴史―戦後の見渡す限りの荒れ地から、いかにして現在のような近代化された巨大港に成長してきたか―を実際に感じ、知っていただきたいと思います。ともに時空を超えて、高雄の百年にわたる発展の歴史を見てみませんか。