練り粉人形「捏麵人」師 陳義進
◎文/陳婷芳
◎翻訳/新垣李加子
◎撮影/曽信耀
◎写真提供/英明中学校
1980年代、台湾の町では「捏麵人(練り粉人形)」の行商人がよく見かけた。色鮮やかな捏麵人に子どもたちは心を奪われ、夢中になったものだった。ほどなく、捏麵人が町で見られることはほとんどなくなったが、現在捏麵人を広める活動を精力的に行っている人がいる。七十代の捏麵人師・陳義進さんだ。陳さんは高雄市の小中高校を回り、各校の捏麵人クラブで指導を行ってきた。その中でも、英明中学校は陳さんが最も長く関わっている学校で、活動を始めて二十七年にもなる。
陳さんは語る。捏麵人を発明したのは、三国時代、才知に長けた政治家であった諸葛孔明だと言われている。孔明が軍を率いて川を渡ろうとしたとき、妖怪が出現して祟りを起こし、大波が渦巻いて渡ることができなくなった。すると孔明はもち米で人形を作らせ、牛肉と羊肉を包み、それを捧げものとして川の中に投げ込んだ。翌日川のそばに来ると、昨日の大波が嘘のように静まっており、川を越えることができたという。
陳さんは、お寺の主催していたサマーキャンプで捏麵人の技術を学んだ。捏麵人作りに重要なのは、人形の形状やバランスであるが、陳さんは以前学んだ美術の基礎をもとに、それらの技術を磨いてきた。さまざまな技法と自作の道具を用いて捏麵人を作り出すのだ。その中には、誰もが知っている中国明代の物語・西遊記の孫悟空や猪八戒などのキャラクターもいる。練り粉を駆使して作られた人形たちはどれも今にも動き出しそうなほど生き生きとしており、また油彩の風景画のように鮮やかでもある。また、捏麵人は伝統工芸であるが、陳さんは新しいタイプの捏麵人も受け入れてきた。児童や生徒たちが見るマンガやアニメのキャラクターを題材にした作品も、新しい時代の捏麵人として肯定的に受け止めているのだ。
陳さんの授業では、必ず白玉粉でできた伝統的な生地を使う。授業の際には、そのような自家製の白玉粉の生地を使う理由について説明している。捏麵人作りには、以前は白玉粉だけが用いられ、作ったあとに食べられるものだった。その後、小麦粉を用い、カビやひびを避ける処理が施された柔らかな材料が使われるようになった。しかし、陳さんが用いるのはあくまで伝統的な手法だ。捏麵人用の樹脂粘土を販売する店もある中で、近道をせず、失われつつある捏麵人の技術を次の世代に繋いでいるのだ。